花のすみれを漢字で書くと、菫。
勤の左側と似ていますが、同じ字ではありません。菫は草冠の下にもう一本横棒があります。
菫
画数:11画
音読み:キン、コン、ギン 訓読み:すみれ意味は野草のスミレ。
諸説ありますが、一説には、草冠と僅差の僅を合わせて簡略した字で、小さい野菜の意味のある字。
この辺りに生えるスミレ Viola mandshurica はあでやかな濃い紫色の花を咲かせる。種としては珍しくも何ともないものなんだけど、次またここを訪れる時もまだ残ってるといいなって思う。 pic.twitter.com/QkhfjWv035
— ぬーむ (@Celastrus91st) May 22, 2017
菫は春の季語
菫は春に花咲くことから、春の襲(かさね)の色目の名前で、春の季語とされることがあります。スミレと一言にいっても多種多様ですが、“Viola mandshurica”という品種は日本に古来から自生しています。
菫の花とは
菫は春の花の中でも、地べたにひっそりと咲く印象があります。普段花に興味がない人でさえ注目する春の花・梅や桜、桃、杏などとは雰囲気が異なります。よほど花に興味がある人でなければ菫に目を向けることはないでしょう。
菫は人気の名前?
大人気の名前とまでは行きませんが、2019年の明治安田生命の名前ランキングの、漢字表記を無視した読み方のランキングで、48位に入りました。
昔から時折見かけるけれども、大流行まではしない息の長い名前と言えるでしょうか。大流行して終息しまうと、どうしてもその年代のイメージがついてしまい、のちのち古い名前と敬遠される可能性があるので大流行しないというのはそれほど悪いことではありません。
菫を読んだ和歌
春(はる)の野(の)に すみれ摘(つ)みにと 来(こ)し我(わ)れそ 野(の)をなつかしみ 一夜(ひとよ)寝(ね)にける (万葉集・山部赤人(やまべ の あかひと))
春の野にすみれを摘みにやってきたけれど、野を去りがたくて一晩過ごしてしまったという和歌。8世紀に完成されたとされる万葉集にも収録されているように菫は古くから和歌に詠まれてきました。
文化人はこう捉えた
夏目漱石は、“菫程な小さき人に生れたし”という不思議な句を作りました。解釈はそれぞれですが、菫は小さくて、目立たない花であるものの、アスファルトの割れ目にもひっそりと咲くたくましいところがあるのでそのようにありたいという風に解釈されることがあります。
ダジャレから?
菫はローマ字で書くとSumire. どこか英単語のSmile(=声を出さずに笑う)に近いように見えることからスミレと付ける人もいるようです。ただ、正式な表記をsmileにしてしまうと海外では不思議な顔をされるかもしれません。日本語でいうと“ほほえみ”、“微笑”のような名前なので、Smileという名前の人が絶対にいないとは言いませんが、少なくとも英語圏では物珍しい名前です。
宝塚の印象も?
『清く、正しく、美しく』でおなじみの宝塚歌劇団の華やかなイメージを抱く人もいます。これは、“すみれの花咲くころ”という歌が、宝塚歌劇団を象徴する歌とされることがあるからです。
菫という字は難しい?
菫という漢字は、スミレの花を意味するとき以外に使用する機会がほとんどないので、何も見ないで手書きできる人は少ないかもしれません。もっとも、常用漢字表にない字ですから、手書きできなければ恥ずかしいというレベルの漢字ではありません。しかし、他人の名前を手書きする機会はどんどん減っています。漢字一文字でスミレと言えば、変換候補は菫しかありません。パソコン/スマホの時代ですからパパっと変換できるのは便利かもしれませんね。
無理に説明するとしたら勤務の勤の左側の草冠の下に一文字加えた字でしょうか。
菫は古くからあって新しい名前?
この菫という字が人名に使えるようになったのは、1990年(平成2年)のこと。ちなみに、戦前は今と法律が違うため、人名に使える漢字に制限はありませんでした。改名したなど様々な事情を持つ人がいるでしょうが、菫という名前の人は戦前生まれと1990年以降に生まれた人がほとんどです。
それゆえに、菫はやや目新しい印象を与えるかもしれません。
参考:
https://www.meijiyasuda.co.jp/enjoy/ranking/index.h