紫と書いて、ゆかり と読む名前の人がいますが、それはなぜなのでしょう?
漢和辞典で調べてみました。
紫
総画:12画
音読み:シ 訓読み:むらさき
《名付け》むら、むらさき《意味》
むらさき。青と赤のまじった色。
△孔子はこれを中間色だとしてにくんだが、いっぽうまた、高貴の色として珍重された。
[日本語特有の意味]むらさき。醤油(ショウユ)のこと。《解字》
会意兼形声。此(シ)は、「止(=趾。あし)」+比(ならぶ)の略体」の会意文字で、両足がそろわず、ちぐはぐに並ぶこと。紫は「糸+音符(此)」で、赤と青をまぜて染めた色がそろわず、ちぐはぐの中間色となること。(漢字源より抜粋)
紫でゆかりの読み方は見つかりませんでした。
名乗り読み(名前に使う特別な読み方)でもないようです。
さらに調べてみると、このような和歌が見つかりました。
紫(むらさき)の ひともとゆゑに 武蔵野(むさしの)の 草(くさ)はみながら あはれとぞ見る
古今和歌集に収められた作者のわからない和歌です。古今和歌集は900年代前半、つまり、平安時代前期頃に編纂されたと言われています。
この和歌を意訳すれば、ただ一本の紫という草があるために、武蔵野のすべての草は、紫にゆかりのあるものとして懐かしいものに見えるというもの。
この和歌が発端となり、紫と書いてゆかりと読むようになったという説があります。
結構とんでもない読ませ方ですよね。
桃にゆかりを感じていたら桃(ゆかり)だったのか?桜にゆかりを感じていたら桜(ゆかり)だったのか?なんて。
漢和辞典にユカリを載せなかったのは、由来を考えて、さすがにそれは気が引けたのかもしれません?
ゆかり【縁・所縁】
1.血のつながり、また何らかの続きあい・関係があること。
2.赤紫蘇の葉を乾燥させ粉末にしたもの。(広辞苑第五版より抜粋)
とはいえ、和歌に由来することから風流だと思う人もいるようです。
源氏物語に登場する紫の上にちなんだ名付けであるというケースも。
この読ませ方には賛否両論ありそうです。
ただ、日本語というのはかなり自由なもので、人名にのみ使われる名乗り読みというものも由緒がよくわからないものが少なくありません。
なぜ和や一でカズなのか?信でノブは?康でヤスは?
紫でユカリくらいなんのそのなのかも?
どこか苗字を選びそうな名前でもあります。
紫色は中国で高貴な色とされたことが、日本に伝わり、603年に制定された冠位十二階で最上位の色は紫色とされました。古来、原材料が手に入りにくく、紫色に染めることが難しかったことから、欧州でも中国でも日本でも紫色は特別な存在でした。
近年、紫色は女の子にじわじわと人気が出ているそうです。
ディズニープリンセスの『塔の上のラプンツェル』のラプンツェルや『ちいさなプリンセス ソフィア』のソフィアが紫色のドレスを着ているからでしょうか。
紫色のプリキュアがいることも影響があるのかもしれません。