鬼滅の刃が原因で“凪”という名前の人が増えたってウソ?ホント?

11月に入ったばかりの頃、このようなニュースが話題になりました。

赤ちゃんの名前 「凪」が順位急上昇 「鬼滅の刃」人気が反映!?

ベネッセは4日、今年1~9月に生まれた赤ちゃんの名前の調査結果を発表した。最多の1位は、男の子が3年連続で蓮(れん=主な読み方)、女の子が5年連続で陽葵(ひまり)だった。

男女ともに順位が最も急上昇した名前は凪(なぎ)。社会現象になっている漫画「鬼滅の刃」に登場する冨岡義勇の編み出した技が「水の呼吸拾壱ノ型 凪」。作中で屈指の人気を誇っており、「鬼滅」人気が反映された可能性もある。男の子の2位は陽翔(はると)、3位は蒼(あおい)。女の子の2位は結菜(ゆいな)、3位は莉子(りこ)だった。

参考:https://www.sponichi.co.jp/society/news/2020/11/05/kiji/20201105s00042000037000c.html

凪という字が急上昇したとのこと。ところでどれくらい増えたのでしょう。

たまひよのランキングではわかりませんでしたので、明治安田生命の名前ランキングで調べてみました。

明治安田生命の名前ランキングは、個人保険・個人年金保険の保有契約のうち、
2018年は、2018年生まれの男の子9,796人、女の子9,481人
2019年は、2019年生まれの男の子8,455人、女の子8,407人
2020年は、2020年生まれの男の子9,172人、女の子8,825人
が調査対象となっています。

明治安田生命の名前ランキングは、2004年から100位以内に入る名前を公表しています。

凪(男の子)
順位 人数 占有率
2019年 63位 11人 0.13%
2020年 23位 22人 0.24%
凪(女の子)
順位 人数 占有率
2018年 74位 12人 0.13%
2019年 36位 18人 0.21%
2020年 15位 26人 0.29%

2018年にはじめてランキング入りし、じわじわと人気をあげていることがわかります。

2018年といえば、何があったでしょう?
調べてみたのですが、わかりませんでした。


実は、表記のみを考慮したランキングで上位の名前より、読み方のみを考慮したランキングで上位の名前の方が人数が多いです。
読み方のみを考慮したランキングで上位ということは、仮に、ハルキで、春樹、春希など漢字表記にバラツキがあっても、そのように呼ばれる人が多い名前ということです。例えば、男の子の名前ランキングで、表記のみを考慮したランキングで1位の蒼は48人で、その占有率は0.52%でしたが、12年連続1位のハルトは221人で、その占有率は2.21%でした。これほどに差があります。

読み方のみを考慮したランキングは2004年から50位まで発表されています。

男の子の、読み方のみを考慮したランキングでナギは見つかりませんでした。

ナギ(女の子)
順位 人数 占有率
2020年 48位 39人 0.44%

2020年の女の子の読み方のランキングに初めてナギが入りました。


ナギという名前の人気が出ているのは事実。

近年、和語であったり、オーガニック系ともいわれる自然に由来する名前が人気です。
アオイ、ミナト、イツキ、ヒナタ、ソラ、アサヒ、アカリなど。

凪もその一種ではないでしょうか。

凪という字は、世にも珍しい国字です。つまり、日本製の漢字です。国字で、下の名前に使えるものはそれほど多くありません。
海を連想する字なので自然物。
まさしくトレンドを取り入れた名前といえます。

凪とは風がやんでおだやかになることを意味する字。
不安定な世の中で、穏やかに過ごしてほしいという願いが感じられます。

止という字が入るので、ネガティブな印象を抱く人もいて、賛否ある字です。
凪では船が進まないとも現代ではモーターが付いていることが多いのだから関係ないとも。

戦後の1948年頃に人名に使える字が制限されるようになり、凪の字は一時期日本人の本名(下の名前)に使うことができなくなりました。
後、1990年に人名用漢字に入りました。ただし、法改正以前からある苗字や既に付けられた名前については規制の対象外です。
このため、日本人の本名(下の名前)に凪が入るのは、戦前生まれや、平成以降に生まれた人がほとんどです(改名したなどの事情でそうではない人がいるかもしれませんが)。
こうした事情で凪が名前に入る人をあまり目にしたことがなく、さまざまな印象を抱く人がいるのでしょう。

近年、凪という字の人気が出たのは事実ですが、さまざまな要素が組み合わさったものと考えられ、『鬼滅の刃』だけではなさそうだと感じました。

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