2010年ころからキラキラネームという言葉が流行り始めたようです。
キラキラネームとは、やや風変りな名前を指します。
では2010年にどんな名前が流行ったかというと、
男の子 1位. ハルト 2位. ユウト 3位. ユウマ
女の子 1位. メイ 2位. ユイ 3位. リオ
2018年にはどうなったかというと、
男の子 1位. ハルト 2位. ユウト 3位. ソウタ
女の子 1位. ユイ 2位. アカリ 3位. ハナ
⇒source:https://www.meijiyasuda.co.jp/index.html
こう呼ばれている子が多いようです。でも、全然変な名前じゃないですね。
よくよく考えるとキラキラネームが多いかどうかをランキングで見るのは無理な話でした。
みんなと違う名前にしようとしているのだから当然ここに挙がるような名前は避けますよね。
でも、変わった名前って今に始まったことじゃないのかもしれません。
漢字はそもそも中国のもので、日本語に合うように読み方を弄ったので、読み方は超自由。
日本では中国と全然意味が違う使い方をしてみたり、簡略化したり、新しい字(日本独自の国字)を生み出したりと独自の進化を遂げてきました。
だから、それほどに漢字の読み方って厳密なものではないのだと思います。
普段使う中国風の読み方が音読み、おおよそ日本語らしい読み方が訓読み。
さらに特殊な熟字訓、接頭語、名乗り読みとさまざまな読み方が誕生しました。
接頭語と呼ばれる特殊な読み方があります。
接頭語は、接頭辞ともいって、語の前に付いて意味を添えたり、変化を加える言葉。
接頭語の例は、愛をマナやエと読むもの。
愛をマナと読む場合は親愛や称美の意味を示します。愛ではなく真を使うこともあります。
愛娘(まなむすめ)、愛弟子(まなでし)など。
愛をエと読ませる場合は、愛すべきを意味します。
古典に登場する“えをとこ”や、“えをとめ”など。
地名の愛媛のエにも使われていますね。
また、早をサと読ませるのも接頭語で、早い、若々しいを意味します。
早乙女(さおとめ)、早苗(さなえ)など。
熟字訓とは2字以上の漢字が結合した熟字を、訓読みしたものを言います。
日向でヒナタ、明日でアス・アシタ、紅葉でモミジ、疾風でハヤテなど。
漢字一文字一文字の音読みでもなく、訓読みでもなく、構成された漢字二文字の意味から日本語の音を当てた形です。
逆に、漢字の意味をまるで無視して、漢字の音のみを借りる、当て字というものもあります。
亜米利加と書いてアメリカ、加奈陀と書いてカナダ、奈落と書いてナラク(梵語で地獄やどん底の意味)、芽出度いと書いてメデタイなど。
こうしてみるとやはり漢字の使い方って結構自由ですよね。
人名や地名というのは往々にして読みにくいもの。
飛鳥でなぜアスカなのかは未だによくわかっていないみたいです。
全国津々浦々、普通の音訓では絶対に読めない地名が数多く存在します。
昔の人は何を思ってこの名前にしたのだろうと思うことも多々・・・。
言いにくいために転じたとか、現地の方言ではそう訛るなど諸般の事情が想像できるものもありますが、全くかけ離れているとなると不思議ですよね。
そして、世にも珍しい苗字ですが小鳥遊(たかなし)さんが存在しているそうです(フィクションではアリキタリというレベルですが、超希少姓です)。
鷹無し=小鳥が遊べるという意味だと言われています。なかなかに凄い読ませ方ですね。
また、紫でユカリと読ませるのは、
古今和歌集の“紫のひともとゆえに武蔵野の草はみながらあはれとぞ見る”からだという説があります。
この和歌は、美しい紫草の一本ゆえにそれだけで武蔵野全体がいとおしく見えるという意味。そこから紫に縁(ゆかり)を感じる=紫(ゆかり)という、これまた超展開な読ませ方です。
さすがに超展開過ぎたのか手元にある広辞苑や、漢和辞典には紫でユカリは載っていませんでした。名乗り読みでさえ載っていない状況です。
最新版はどうなのかは存じませんが、手持ちの漢和辞典でユカリの読み方があるのは縁と因だけでした。
この名乗り読みというのもまた、フリーダムな読ませ方。漢字源によると、名前を付けるときに使う読み方のこと。
漢数字のほとんどは、カズの読み方があります。数字だからカズって読んでいいでしょうという理論でしょうね。
変わったものでは容でイルルなんてものも。古語のイル(入る)の連体形でしょうか?
歴史上の人物の名前も、一筋縄では読めないものばかり。
織田信長も徳川家康も一般的な音訓では読むことができません。
名乗り読みというのは、その名乗り読みを使った名前の著名人の活躍により、この漢字はこう読めるのだと浸透して一般化したものです。
とはいえ、信はノビルの意味もあるらしく、古語でノビルはノブですから、なんとなく理解できますし、康もおなじくヤスラカの意味があるのでこれもなんとなく理解できます。
なので、意味から考えればそう読んでもおかしくないかもしれないと思えるものもあります。
一方でなんでこう読むのかと思うものもあります。
坂本龍馬の諱は直柔であったという説があるのですが、読めますか?
ナオナリだそうです。歴史に詳しい方なら難なく読めるでしょうが、普通読めないと思います。
なぜ柔でナリなのでしょうね。
昔の日本では本名を大事にするという文化がありました。
そうした経緯から、通称名を付けることもあり、
通称でのみ知られていて本名がよくわからない男性や、立場的な問題もあるのかもしれませんが、本名不詳の女性もいます。
もしかするとあえて読みにくい名前を付けたのかもしれません。
でも今から700年前に存在した吉田兼好は徒然草の百十六段で変わった名前に物申しています。
普段呼ぶ名前はもっとわかりやすくしようということでしょうか。
とにもかくにも、地名、苗字、昔の人の名前、言葉遊びを見ているとそれほど漢字の読み方にこだわっていたわけではないようです。
最近多い(?)読み方。
例えば翔と書いてトブ、希と書いてノゾム、ノゾミというのは
手元の漢和辞典では音読みでも訓読みでもなく、名乗り読みでさえ見当たらない読ませ方です。
最近の辞書なら追加されているでしょうか?
おそらく飛翔の翔だから、飛と意味が似ているし、翔でトブと読んでも良いでしょう
希望の希だから、望と意味が似ているし、希でノゾムやノゾミと読んでも良いでしょう
ということだと思います。
辞書的に言えば、翔の訓読みはカケルで、希の訓読みはマレ、ネガウ、コイネガウなんです。
トブとカケル、ノゾムとコイネガウでは若干ニュアンスが異なるようにも思いますが、名乗り読みというのは、はっきりと基準があるものではありませんし、人数が増えれば名乗り読みに追加される日が来るのかもしれません(辞書によってはもう載っているのかもしれませんね)。
翔でトブは司馬遼太郎の「翔ぶが如く」を思い出しますが、希でノゾミは何がきっかけだったんでしょう?
何にせよ、言葉は生き物なので、どんどん新しい変化を遂げている様子。
これから先、日本の漢字はどのように進化してくのでしょうか。