TBS系列で、火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』が2020年7月より放送され、話題を呼んでいます。
原作は、四ツ原フリコによる漫画『家政夫のナギサさん』。
製薬会社の医薬情報担当者(MR)として働く28歳のキャリアウーマン・相原メイ(あいはら・めい)の前に家政夫の鴫野ナギサ(しぎの・なぎさ)が表れて・・・?仕事にプライベートに忙しく難しい28歳の姿を描いた作品。
実写ドラマでメイを演じるのは、女優の多部未華子(たべ・みかこ)さん。
この作品で重要な役割を担うのがナギサさん。家政夫とあるように、男性です。実写ドラマでは大森南朋(おおもり・なお)さんが演じています。
ナギサという名前には男の子らしい印象があるでしょうか?それとも女の子らしい印象があるでしょうか?
そもそも、ナギサとはどういう意味のある言葉なのでしょう?
なぎさ【渚・汀】
川・海・湖などの波の打ち寄せる所。波打ちぎわ。みぎわ。
(広辞苑第五版より抜粋)
渚
総画:11画
音読み:ショ 訓読み:なぎさ
《意味》
1.{名詞}河川の中に砂や流石などがあつまってできるこじま。なかす。転じて、水ぎわの地。
2.{名詞}なぎさ。波打ぎわ。みぎわ。《解字》
会意兼形声。「水+(音符)者(あつまる)」。砂利や小石が集まってできるなかすのこと。(漢字源より抜粋)
汀
総画:5画
音読み:テイ、チョウ
名前:なぎさ、みぎわ《意味》
1.{名詞}みぎわ。水がうち寄せるたいらな砂地。
2.{名詞}たいらか。水面尾たいらなさま。《解字》
会意兼形声。「水+(音符)丁(テイ)・(チョウ)(T型。たいらな面に直角に当たる)」からなるもの。(漢字源より抜粋)
波打ち際という意味のある言葉。
この名前は、海や川、湖などの水辺が好きな人が名付けたのかもしれませんし、和歌などから名付けたのかもしれません。
大御船 泊ててさもらう 高島の 三尾の勝野の 渚し思ほゆ
-天皇の御船が泊って、風待ちしている高島の、三尾の渚が思い出される。
万葉集より。作者不詳。
波打ち際というと男性的でもなく女性的でもないので、男女どちらにもいるようです。
ちなみに、渚は1976年に、汀は1990年に人名に使うことができるようになりました。ただし、戦前は今と法律が違い、名前に使用できる字に関して特に制限がありませんでした。名前に使うことのできる字に制限が加わるようになったのは1940年代後半のこと。このため、戦前からある苗字や、戦前に生まれた人の名前(本名、下の名前)に渚や汀の字が使われている可能性があります。
男性の著名人では、映画監督の大島渚(おおしま・なぎさ)さんや、元プロ野球選手の新垣渚(あらかき・なぎさ)さんなど。
女性の著名人では、女優の片平なぎさ(かたひら・なぎさ)さんや、お笑いタレントの尼神インターの渚(なぎさ)さんなど。
ただし、昨今は、特に水害が多いので渚、波打ち際という言葉に複雑な感情を抱く人もいるかもしれません。
一方で、『ぼくのなつやすみ』というゲームに凪咲(なぎさ)という名前の女性の看護婦が登場します。この作品は昭和50(1975)年を舞台としているので、看護婦の表記です。現代では看護師ですね。家政婦も家政師になったりするのでしょうか?とにもかくにも、このように凪+サで、なぎさとするケースもあるようです。
凪
総画:6画
《意味》
なぎ。なぐ。風がやんで海が静かになること。《解字》
会意。風の略形と止とをあわせたもので、日本製の字。
(漢字源より抜粋)
この凪という字が人名用漢字に追加されたのは1990年のことです。前述の通り、戦前は名前に使うことのできる漢字に関して特に制限がありませんでした。『ぼくのなつやすみ』に登場する凪咲さんは1975年に看護婦として働いているということですから、名前に使うことのできる字に制限が加わる前に生まれた人という設定なのかもしれません。
また、女性アイドルグループ・NMB48に渋谷凪咲(しぶや・なぎさ)さんがいますね。
ナギサではありませんが、凪という名前が2019年の名前ランキングで、男の子の名前で63位に、女の子の名前で36位になりました。
家政夫のナギサさん (プティルコミックス 1) [ 四ツ原フリコ ]
参考:https://www.meijiyasuda.co.jp/enjoy/ranking/