名前に紅が入る人がいますが、どのような印象がありますか。
そもそも紅とはどのような意味のある字なのでしょうか。
紅
総画:9画
音読み:コウ、ク、グ
訓読み:べに、くれない
《名付け》あか、いろ、くれ、べに、もみ《意味》
1.べに。くれない。もも色に近いあか色。あかい。
2.はでな色。はでなさま。あでやかなさま。
3.べに色の花。あでやかな花。転じて、花のような女性。
4.べに。口べに。ほおべに。《解字》
形声。「糸+(音符)工」(漢字源より抜粋)
この字の意味は、べに。
検索してみるとこのような色のようです。
⇒紅色★★★★★
あるいは、紅梅色。
⇒紅梅色★★★★★
他に人名に使われてる赤系の色といえば、
茜色(沈んだ赤色)、緋色(濃くて明るい赤色)、真朱(穂の赤色)、朱色(黄味の強い赤色)、桃色(うすい赤色)、桜色(あわい赤色)など。
⇒茜色★★★★★
⇒緋色★★★★★
⇒真朱★★★★★
⇒朱色★★★★★
⇒桃色★★★★★
⇒桜色★★★★★
紅は女性を象徴する色のようですね。
こう【紅】
(慣用音はク)1.くれない。べにいろ。
2.化粧用のべに。
3.女性の意。(広辞苑第五版より抜粋)
紅が付く女性に関する言葉に紅楼、紅閨、紅裾、紅涙など。
化粧の意味では、紅脂、紅粉、紅唇、紅白粉、紅鉄漿など。また、紅を付ける時に使う指であることから、紅付指や紅差指とは薬指のことを言います。
特に悪い意味のある字ではないのですが、はでな色、あでやかの意味があるように、はでな印象を持つ人もいるようです。例えば、紅灯の巷とは花街のことを言います。
また、昔の日本人にはオランダ人の髪が紅色に見えたようで、オランダ人のことを紅毛人というようになり、後に広く欧米人を紅毛人というようになりました。紅毛碧眼という言葉もあります。
検索して出てきたのは、商社の丸紅、『はいからさんが通る』という作品に登場する紅緒、地名では紅海、紅河など。
商社の丸紅は紅が高貴な色であるということから紅を使ったと言われています。『はいからさんが通る』は、1970年代の作品ですが、2020年に宝塚歌劇団で舞台化されて話題になりました。紅河はベトナムを流れる河で鉄分を帯びるために紅を帯びた色をしています。紅海はアラビア半島とアフリカの間にあり、藻が繁殖して紅変することがあることからこの名前になったという説があります。
また、紅はどうやら中国で人気の高い色のようですね。
Contents
紅が入る言葉
紅が付く言葉にはどのようなものがあるのでしょうか。名前に参考になりそうなものを探してみました。
こうぞめづき【紅染月】
陰暦8月の異称。
(広辞苑第五版より抜粋)
紅葉月【もみじづき】
陰暦9月の異称。
(広辞苑第五版より抜粋)
がんらいこう【雁来紅】
ハゲイトウの別称。
△秋、ガンが渡ってくるころに葉が紅色になることから。
(明鏡国語辞典より抜粋)
くれないぎく【紅菊】
襲(かさね)の色目。表は紅、裏は青。秋に用いる。
(広辞苑第五版より抜粋)
ぐれん【紅蓮】
[仏教]
1.紅色の蓮華。猛火の炎の色にたとえる。
2.紅蓮地獄の略。⇒ぐれんじごく【紅蓮地獄】
八寒地獄の第7。ここに堕ちた者は、極寒のために皮膚が裂けて血が流れ、紅色の蓮花に似るという。(広辞苑第五版より抜粋)
こうう【紅雨】
1.春、花にそそぐ雨。
2.あかい花の散るさまを雨にたとえていう語。(広辞苑第五版より抜粋)
こうか【紅霞】
夕日で赤く染まった霞。夕焼けの雲。
(広辞苑第五版より抜粋)
こうがん【紅顔】
婦人の麗しい容貌。また、年若い頃の血色のつやつやした顔。
(広辞苑第五版より抜粋)
こうきょう【紅鏡】
(コウケイとも)虹色に輝く円鏡の意で、太陽のこと。
(広辞苑第五版より抜粋)
こうぎょく【紅玉】
1.ルビーの訳語。
2.美人の肌などのつやつやと美しいたとえ。
3.リンゴの一品種。(広辞苑第五版より抜粋)
こうし【紅紫】
くれないとむらさき。さまざまの花の色や美人・衣服などの色彩の美しいたとえ。
(広辞苑第五版より抜粋)
こうじゅほうしょう【紅綬褒章】
自己の危難を顧みずに人命を救助した者に授与される褒章。紅色の綬で佩用。
(広辞苑第五版より抜粋)
こうせつ【紅雪】
赤雪に同じ。
⇒赤雪【せきせつ】
赤い雪。寒帯地方および高山の積雪上に赤色の藻類が繁殖するため、赤色を呈する物。紅雪。雪の華。あかゆき。
(広辞苑第五版より抜粋)
こうちょう【紅潮】
1.日に映えて紅に見える海潮。
2.顔に血がのぼって赤みをおびること。
3.月経。(広辞苑第五版より抜粋)
こうとう【紅桃】
紅色の花が咲く桃。
(広辞苑第五版より抜粋)
こうばい【紅梅】
1.紅色の花の梅。〈季語:春〉
2.紅梅色の略。
3.紅梅襲(がさね)の略。⇒こうばいがさね【紅梅襲】
襲(かさね)の色目。表は白、裏は蘇芳。春に着用。
(広辞苑第五版より抜粋)
こごうし【紅格子】
紅の地に格子縞を織った練貫の織物。高貴の女房の着たもの。
(広辞苑第五版より抜粋)
しんく【真紅・深紅】
濃い紅色。まっか。
(明鏡国語辞典より抜粋)
せんしばんこう【千紫万紅】
種々さまざまの花の色。また、色とりどりの花が咲き乱れるさま。
(広辞苑第五版より抜粋)
てんとうむし【天道虫・瓢虫・紅娘】
(店頭虫とする説がある)テントウムシ科の甲虫の総称。
(広辞苑第五版より抜粋)
とうてんこう【東天紅】
1.(東の空が紅くなったのを知らせる意をこめた当て字)暁に鳥の鳴く声。
(広辞苑第五版より抜粋)
びんがた【紅型】
沖縄で産する文様染。1枚の型紙を用いて多彩な文様を染め分ける。
(広辞苑第五版より抜粋)
べにお【紅緒】
紅色の鼻緒。
(広辞苑第五版より抜粋)
ゆうくれない【夕紅】
夕暮に紅をいいかけた語。また、夕方、西の空の紅になること。
(広辞苑第五版より抜粋)
もみじ【紅葉・黄葉】
(上代にはモミチと清音。上代は「黄葉」、平安時代以後「紅葉」と書く例が多い)1.秋に、木の葉が赤や黄色に色づくこと。また、その葉。〈季語:秋〉
2.カエデの別称。〈季語:秋〉
3.襲(かさね)の色目。「雑事抄」によると、表は紅、裏は濃い蘇芳。「雁衣抄」では赤、裏は濃い赤。
4.(鹿にはもみじが取り合されるところから)鹿の肉。(広辞苑第五版より抜粋)
紅葉のような手
幼児の、小さくて可愛らしい手。
(広辞苑第五版より抜粋)
紅葉を散らす
少女などが恥かしさに顔を赤らめる。
(広辞苑第五版より抜粋)
紅は園生に植えても隠れなし(くれないはそのうにうえてもかくれなし)
才徳の優れた者は、どのような所に居てもきわだって見える意。
(広辞苑第五版より抜粋)
など。
紅梅色は平安貴族に大変愛された色のようです。その一方でモミジに関する言葉も多くあり、紅葉狩りなど紅葉も大変に好まれたのでしょう。
紅は名前に人気の字?
明治安田生命の名前ランキングでは、その年に生まれた赤ちゃんに付けられた名前のうち、人気のものを1912年からは上位10位までを、2004年からは上位100位までを公表しています。
紅はどうでしょうか。
紅は今までに名前ランキングに登場したことが一度もありません。
紅が使われている可能性のある人気の響きは?
明治安田生命の名前ランキングでは、漢字表記を考慮せず、読み方のみを考慮したものを2004年から50位まで発表しています。
占有率を見てみると、2020年の女の子の名前ランキングで1位の陽葵が0.53%であるのに対して、同年の女の子の読み方のランキングで1位のミオが1.27%となっています。
これを参考にするならば、2020年生まれで、陽葵と書く女の子よりも、ミオと呼ばれる女の子の方がずっと多いのではないでしょうか。
例年、このように表記のみを考慮した名前ランキングよりも読み方のみを考慮したランキングの方が占有率が高くなっています。
では、紅が付く名前はどうでしょうか。
紅の音読みはコウ、ク、訓読みはべに。これらの音が入る名前は人気があるのでしょうか。
2020年の女の子の読み方のランキングでは、サクラが16位でした。
2020年の男の子の読み方のランキングでは、リクが10位、コウキが13位、リクトが29位、コウタが30位、サクが31位、タクミが38位、コウセイが50位でした。
2004年以来、ベニはランキング入りしたことがありません。
女の子
2020年の女の子の読み方のランキングではサクラが16位でした。
また、明治安田生命の名前ランキングでは、読み方のランキングで上位3位以内に入る名前に限ってどのような表記が用いられているかも公表しています。
サクラは2017年に読み方のランキングで1位になりました。
2017年のランキングでは、2017年生まれの女の子8030人が調査対象となりましたが、そのうち125人がサクラだったといいます。
ちなみに、サクラで1番人気の表記は咲良で38人、2番目がひらがなのさくらで36人、3番目が桜で20人でした。
その次からはなんと3人以下になるので、メジャーな表記であるとは言えなさそうです。
紅が付く名前では、咲紅が2人で、咲紅良が1人でした。
サクラ | |
---|---|
年 | 順位(女の子)/読み方 |
2004年 | 5位 |
2005年 | 5位 |
2006年 | 14位 |
2007年 | 6位 |
2008年 | 10位 |
2009年 | 14位 |
2010年 | 12位 |
2011年 | 16位 |
2012年 | 18位 |
2013年 | 9位 |
2014年 | 11位 |
2015年 | 8位 |
2016年 | 2位 |
2017年 | 1位 |
2018年 | 6位 |
2019年 | 5位 |
2020年 | 16位 |
男の子
2020年の男の子の読み方のランキングでは、リクが10位、コウキが13位、リクトが29位、コウタが30位、サクが31位、タクミが38位、コウセイが50位でした。
また、女の子の名前ランキングと同じように、明治安田生命の名前ランキングでは、読み方のランキングで上位3位以内に入る名前に限ってどのような表記が用いられているかも公表しています。
コウキは2006年に読み方のランキングで3位になりました。
2006年のランキングでは、2006年生まれの男の子4409人が調査対象となりましたが、そのうち74人がコウキであったといいます。
このうち、コウキで紅葵という表記の男の子が一人だけいました。
リク | コウキ | リクト | コウタ | サク | タクミ | コウセイ | |
年 | 順位(男の子)/読み方 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2004年 | 10位 | 5位 | 33位 | 7位 | – | 6位 | 24位 |
2005年 | 12位 | 6位 | – | 13位 | – | 7位 | 19位 |
2006年 | 5位 | 3位 | 28位 | 13位 | – | 11位 | 20位 |
2007年 | 6位 | 4位 | 31位 | 12位 | – | 19位 | 21位 |
2008年 | 6位 | 5位 | 24位 | 18位 | – | 21位 | 25位 |
2009年 | 5位 | 4位 | 28位 | 24位 | – | 33位 | 11位 |
2010年 | 8位 | 11位 | 19位 | 18位 | – | 33位 | 30位 |
2011年 | 16位 | 8位 | 17位 | 13位 | – | 43位 | 18位 |
2012年 | 10位 | 8位 | 31位 | 17位 | – | 22位 | 28位 |
2013年 | 7位 | 11位 | 30位 | 37位 | – | 43位 | 30位 |
2014年 | 5位 | 26位 | 21位 | 23位 | – | 38位 | 44位 |
2015年 | 6位 | 8位 | 26位 | 28位 | – | 35位 | 32位 |
2016年 | 6位 | 19位 | 30位 | 25位 | – | 9位 | 36位 |
2017年 | 5位 | 10位 | 20位 | 25位 | – | 39位 | 31位 |
2018年 | 6位 | 7位 | 28位 | 32位 | 38位 | 33位 | – |
2019年 | 5位 | 7位 | 40位 | 40位 | 46位 | 50位 | 27位 |
2020年 | 10位 | 13位 | 29位 | 30位 | 31位 | 38位 | 50位 |
参考:https://www.meijiyasuda.co.jp/sp/enjoy/ranking/index.html
まとめ
紅は、紅一点など、どちらかといえば女性的なイメージがあります。
しかし、紅の音読みであるコウやク、訓読みのベニの音は女性名にはあまり人気がありません。人気があったといえば、2004年には16位だったミクの響きですが、2016年以降読み方のランキングで50位以内に入らなくなってしまいました。2020年の女の子の読み方のランキングで唯一50位以内に入るのがサクラですが、咲良・さくら(ひらがな)・桜が主流。
2018年に読み方のランキングでアカリが2位になったのですが、ひらがなのあかりに次いで、2番目に人気の表記が朱莉でした。紅がいまいち人気が出ないのは音感のせいなのかもしれませんね。
一方で男の子ではサク、リク、リクト、コウキ、コウタ、コウセイとクやコウの音が人気のわりに紅が付く名前が100位以内に入ったことがなく、あまり積極的に使われている様子ではありません。
紅が名前に入る有名人
紅は実際にどのように名前に用いられているのでしょうか。
男性
○尾崎 紅葉(おざき こうよう)
*本名は徳太郎(とくたろう)。
1868年1月10日(慶応3年12月16日)~1903年(明治36年)10月30日。小説家。
○今村 紫紅(いまむら しこう)
*本名は寿三郎。
1880年12月16日~1916年。日本画家。
○岡田 紅陽(おかだ こうよう)
*本名は賢治郎。
1895年8月31日~1972年。写真家。
○黒星紅白(くろぼしこうはく)
1974年11月19日生まれ。イラストレーター。
女性
◇篠田 桃紅(しのだ とうこう)
*本名は満州子(ますこ)。
1913年3月28日~2021年。美術家、版画家、エッセイスト。
◇山村 紅葉(やまむら もみじ)
1960年10月27生まれ。女優。
◇佐久間 紅美(さくま くみ)
1976年11月2日生まれ。声優。
◇BENI(ベニ)/安良城 紅(あらしろ べに)
1986年3月30日生まれ。歌手。
◇藤本 紅美(ふじもと くみ)
1995年1月5日生まれ。岡山放送のアナウンサー。
◇宇山 芽紅(うやま めぐ)
1996年1月14日生まれ。トランポリン競技選手。
◇岡田 美紅(おかだ みく)
1997年11月13日生まれ。アイドルグループ・SKE48の元メンバー。
◇竹俣 紅(たけまた べに)
1998年6月27日生まれ。フジテレビのアナウンサー、将棋の元女流棋士。
◇松村 美紅(まつむら みく)
2004年2月7日生まれ。アイドルグループ・AKB48の元メンバー。
◇山田 美紅羽(やまだ みくう)
2005年11月14日生まれ。子役。
グローバル
男性
○Jin Hongguang/金 紅光/김 홍광
1957年5月9日生まれ。中国の物理化学者。
両親は共に韓国人で、中国で生まれ育った。
女性
◇蕭 紅(Xiao Hong)
*ペンネーム。
1911年6月2日~1942年。中華民国の作家。
◇譚 倩紅/Sin-hung Tam
1931年8月28日生まれ。台湾の女優。
◇南 紅/Hung Nam
*芸名。
1934年生まれ。中国出身で香港で有名な女優。
◇林 滿紅(Lin Man-houng)
1951年2月12日生まれ。台湾の経済史家。
◇Cher Wang/王 雪紅(Wang Xuehong)
1958年9月14日生まれ。台湾の起業家、篤志家。
◇Kara Wai/カラ・ウェイ/惠 英紅(Wai Jing Hung)
1960年6月3日生まれ。香港の女優。
◇王 曉紅(Wang Xiaohong)
1968年11月20日生まれ。中国の水泳競技選手。
◇喬 紅(Qiao Hong)
1968年11月21日生まれ。中国の元卓球選手。
◇Cherie Chung/チェリー・チェン/鍾 楚紅(Chung Cho Hung)
1960年2月16日生まれ。香港の女優。
◇錢 紅(Qian Hong)
1971年1月30日生まれ。中国の水泳競技選手。
◇韓 紅/ハン・ホン/Han Hong
1971年9月26日生まれ。中国の軍隊歌手。
◇張 越紅(Zhang Yuehong)
1975年11月9日生まれ。中国のバレーボール選手。
◇周 蘇紅(Zhou Suhong)
1979年4月23日生まれ。中国のバレーボール選手。
◇倪 紅(Ni Hong)
1986年2月28日生まれ。中国のフェンシング選手。
など。
中国語では、紅は色の意味だけでなく、順調、人気があるという意味でも用いられているようです。
日本人では、紅が付く名前の人はあまり多くは見つけられませんでした。特に日本人男性で本名に紅が付く有名人は探すことができませんでした。やはり女性のイメージが強いのでしょうか。