「月経カップのリスクを知ってください」─両足切断の女性の訴えというニュースから
新しいタイプの生理用品として近年注目を集める「月経カップ」。タンポンに比べて長時間使用でき、環境にも優しいことから日本でも普及しつつある。
だが、トキシックショック症候群(TSS)のリスクは見過ごされがちだ。
月経カップによるトキシックショック症候群を発症し、両足と手の指関節を18個切断した女性が、「ル・パリジャン」紙で証言し、注意喚起をおこなった。
月経カップでトキシックショック症候群の衝撃
月経カップとは、医療用シリコンなどで作られた小さなカップで、膣内に挿入し経血を受け止める生理用品である。近年、タンポンやナプキンに変わる新しい生理用品として注目を集めている。
一般的なタンポンの使用時間が4~8時間を目安としているのに対し、月経カップはメーカーによっては最長12時間まで使用可としており、タンポンに比べて長時間使用できるというメリットがある。また、使い捨てではなく、洗って繰り返し使えるために経済的で環境にもやさしい。トキシックショック症候群のリスクも、タンポンに比べて低いとされる。
このため、1月20日「ル・パリジャン」紙に月経カップを使用していてトキシックショック症候群を発症した女性の証言が掲載されると、安全と思われていた月経カップでの事故だけに大きな衝撃が走った。
トキシックショック症候群って何?
トキシックショック症候群は黄色ブドウ球菌が作り出す毒素によって引き起こされる疾患だ。
主な症状は下痢、嘔吐、発熱などで、毒素によって組織が壊疽することもある。非常にまれな疾患で、フランスでの発症件数は年間わずか20人程度だが、重症化すると死に至る可能性もある。男性でも女性でもかかる疾患だが、これまでタンポンの使用がリスク要因となることが知られてきた。特に吸収性の高いタンポンは、その原材料と経血が混ざることで黄色ブドウ球菌の増殖を助け、トキシックショック症候群の原因となる可能性があると言われている。
タンポン使用によるトキシックショック症候群については、右足を切断したアメリカのモデル、ローレン・ワッサーのケースなどを通して、これまでもメディアで注目を集め、注意喚起がなされてきた。また、今年1月9日にはベルギーの17歳の女性がタンポンによるトキシックショック症候群で死亡し、フランスでも大きな話題となった。
だが、月経カップでのトキシックショック症候群の危険性は、フランスでも一般には充分に知られていない。フランスの週刊誌「レクスプレス」は、全国産婦人科学同業者連盟会長、ピア・ド・レイヤック医師のこんなコメントを紹介している。「多くの女性は月経カップにはリスクがまったくないと信じていますが、そんなことを信じさせてはいけません。月経カップもタンポンと同じような使い方をしなくてはいけません」
彼女によれば、タンポンは4~8時間おきに交換する必要があるように、月経カップも定期に取り出して経血を捨てなくてはならない。
「怒りで我を忘れました」
今回、「ル・パリジャン」紙の取材に応じた36歳の看護師サンドリーヌ・グラノーは、2019年に月経カップによるトキシックショック症候群を発症し、両足と手の指関節を18個切断した。現在、両足は義足で、手の指はそれぞれの指に関節が1つだけ残っている状態だ。
彼女はトキシックショック症候群のリスクについて充分な知識を持っていなかったと言う。「この感染症が月経カップやタンポンの間違った使い方によって引き起こされると聞いて、私は怒りで我を忘れました。だって、私たちに提供される情報には一貫性がないんです。月経カップの場合、説明書に書いてある使用時間はメーカーによって違っていて、4時間、8時間あるいは12時間となっています!(略)どうして明確ではっきりとした使用時間を大きく書いておいてくれないのでしょう?」
サンドリーヌ自身、トキシックショック症候群を発症した日に月経カップを何時間使用していたかはわからないという。異変を感じたのは夜、子供たちに夕飯を用意するころだったことから、「間違いなく何時間ものあいだ」使用していたのだろうと「ル・パリジャン」紙は推測する。
夜、だんだんと腹痛がひどくなっていったため緊急の往診を依頼したが、その日は腎結石と診断されてしまう。トキシックショック症候群という正しい診断が下ったのは翌日病院に搬送されてからだった。まれな疾患であり症状が風邪などと類似しているために、すぐに正しい診断がつかないこともトキシックショック症候群の特徴だ。
サンドリーヌは現在、トキシックショック症候群について正しい知識を伝えるための協会「ダン・メ・バスケット」(私のバスケットシューズの中で)を設立し、啓発活動をおこなっている。
正しい知識で正しい使用を
フランスで公衆衛生のリスク評価をおこなう国立食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は、1月20日に膣内に挿入するタイプのタンポンや月経カップといった生理用品の使用方法に関する勧告をおこなった。
同庁がおこなった評価によれば、タンポンや月経カップに含まれる化学物質は衛生基準値以下であり、それらの原材料とトキシックショック症候群のリスクとの間には直接的な因果関係は見られなかった。だが、同庁はメーカー各社に対し、化学物質の使用をやめるか可能な限り減らすよう、さらなる品質向上を求めている。同庁の公式サイトによれば、「細菌性毒素によって引き起こされるトキシックショック症候群発症のリスクは、膣内に挿入するタイプの生理用品の使用状況と関係がある。このため、同庁は月経によるトキシックショック症候群のリスクと症状に関するより明確な情報が、女性や医療の専門家に提供されるよう勧告する。この改善要求は、近年市場に登場したばかりの月経カップのメーカーを特に対象としている」
さらに同庁は、タンポンも月経カップも使用時間を守ることが重要だとして、注意喚起をおこなっている。また、生理期間中にのみ使用し、経血量にあったものを使うことを推奨する。
フランス国立食品環境労働衛生安全庁のコーディネーターを務める薬剤師・中毒学者のオーレリー・マチユーは「ル・パリジャン」紙の取材に答え、「月経カップやタンポンを使うべきではないと言っているのではありません。最長の使用時間などについて信頼できるデータを消費者に提供することが大切なのです」と前置きをした上で、次のように述べている。
「(最長使用可能時間は)4~6時間です。個人的には4時間を推奨します。夜間や生理ではない時には使用してはいけません。たとえば、おりもののために使ってはいけないのです。月経カップやタンポンを挿入する前にはせっけんで手をよく洗うようにしてください」
タンポンや月経カップは、生理中の女性が快適に、活動的に過ごすことを可能にするアイテムだ。必要以上に恐れることなく、リスクをきちんと認識した上で、正しく安全に使用するよう心がけたい。
クーリエ・ジャポン
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200204-00000006-courrier-int&p=1
センセーショナルに書かれていますが、
サンドリーヌ自身、トキシックショック症候群を発症した日に月経カップを何時間使用していたかはわからないという。異変を感じたのは夜、子供たちに夕飯を用意するころだったことから、「間違いなく何時間ものあいだ」使用していたのだろうと「ル・パリジャン」紙は推測する。
ここが問題のような気がします。看護師という職業柄、長時間使用していた可能性もあり得ます。思い出せないくらい前というわけですし・・・。
使うメリットとしては、臭いが少ないこと、何度も換えなくていいこと、ごみが出ないこと。
デメリットとしては、慣れるまでが大変なこと。
出先で換えるのは困難じゃないかと思います。血まみれのカップを持ってどこで洗ったらいいのでしょう?
ちなみに、このようなものも発売されていますが、膣には自浄作用があるので、水洗い程度でいいそうです。
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ただ、やはり、自宅など限られた場所ならいいけれど、長時間外出するのはすこし不安が残るかなと思いました。
「(最長使用可能時間は)4~6時間です。個人的には4時間を推奨します。夜間や生理ではない時には使用してはいけません。たとえば、おりもののために使ってはいけないのです。月経カップやタンポンを挿入する前にはせっけんで手をよく洗うようにしてください」
(フランス国立食品環境労働衛生安全庁のコーディネーターを務める薬剤師・中毒学者のオーレリー・マチユー)
この記事に登場する専門家の推奨時間が4時間なわけですが、フルタイムで働いている方なら外出時間が10時間以上なんてことも珍しくはないですよね。
SNS上では、子供が血を怖がるからお風呂で使っているという意見もありました。
お風呂や泳ぐときなど、一時的に使うものと捉えておくと良いかもしれません。
このようなニュースが大きく取り上げられることがあるため、タンポンのメーカーも月経カップのメーカーも使用時間について名言を避けている節があるようです。