鼎 という字が人名用漢字に入ったのは、2004年のこと。
ただし、名前に使える漢字に制限が設けられるようになったのは1948年頃のこと。それ以前から存在する苗字や名前については規制の対象外です。このため、改名したなど特殊な事情を持つ人もいますが、日本人で本名に鼎という字が入るのは、苗字がそうであるか、1948年より前に生まれた人か、2004年以降に生まれた人がほとんどです。]
鼎の意味は?
ところで、この鼎という字はどのような意味があるのでしょうか。
鼎
総画:13画
音読み:テイ、チョウ 訓読み:かなえ、あたる、まさに《意味》
1.かなえ(かなへ)。三つの足と二つの耳のある器。もと、なべや食器として用いたが、のちには王侯の祭器、礼器となった。
2.王位のしるし。国に伝わる宝。
3.かなえの足のように、三方に並ぶさま。また、ずっしりと、すわったさま。
4.あたる。まさに。ちょうど・・・だ。《解字》
象形。かなえの形を描いたもの。三則で、安定してすわる器のこと。(漢字源より抜粋)
鼎の書き方⇒書き順
鼎は、器のこと。
古代中国では、帝位の印として用いられました。
きゅうていたいりょ【九鼎大呂】
(大呂は周の大廟(たいびょう)に備えた大鐘で、九鼎とともに周の宝器)貴重な物、重い地位、名望などのたとえ。
(広辞苑第五版より抜粋)
鼎とは帝位の印のような、立派な器の持ち主を連想させる字。
鼎という字を名前に持つ人
鼎という字を名前に持つ人
日本
〇石田 一鼎(いしだ いってい)
1629年~1694年。佐賀藩士。
〇宇野 明霞(うの めいか)
1698年~1745年。儒学者。名を鼎、字を士新、通称 三平。
〇水野 忠鼎(みずの ただかね)
1744年~1818年。肥前国唐津藩2代藩主。
〇秦 鼎(はた かなえ)
1761年~1831年。漢学者。
〇朝川 善庵(あさかわ ぜんあん)
1781年~1849年。儒学者。名は鼎。
〇日野 鼎哉(ひの ていさい)
1797年~1850年。医師。シーボルトに師事。京都で種痘を行う。
〇生方 鼎斎(うぶかた ていさい)
1799年~1856年。書家。
〇宮部 鼎蔵(みやべ ていぞう)
1820年~1864年。武士。熊本藩士。尊王攘夷派の活動家。
〇深尾 重先(ふかお しげもと)
1827年~1890年。土佐藩の重臣。
〇島村 鼎甫(しまむら ていほ)
1830年~1881年。幕末、明治の医学者。
〇箕輪 鼎(みのわ かなえ)
1839年~1894年。政治家、実業家。
〇松本 鼎(まつもと かなえ)
1839年~1907年。幕末の長州藩士、明治期の内務官僚・政治家。
和歌山県知事、衆議院議員、貴族院議員、元老院議官、男爵。
〇大利 鼎吉(おおり ていきち)
1842年~1865年。土佐勤王党の一人。
〇梶山 鼎介(かじやま ていすけ)
1848年~1933年。幕末の長府藩士、明治期の陸軍軍人、外交官、政治家。
〇石井 鼎湖(いしい ていこ)
1848年~1933年。日本画家、版画家。幼名は貞次郎、名は重賢。
〇中島 鼎三(なかじま ていぞう)
1849年~1879年。佐賀藩士。
〇白根 鼎三(しらね ていぞう)
1850年~1918年。政治家。
〇武富 邦鼎(たけとみ くにかね)
1852年~1931年。日本海軍の軍人。
〇久保田 鼎(くぼた かなえ)
1855年~1940年。官僚。
〇松本 鼎(まつもと かなえ)
1856年~1928年。陸軍の軍人。
〇渡部 鼎(わたなべ かなえ)
1858年~1932年。医師、政治家。
〇松岡 鼎(まつおか かなえ)
1860年~1934年。医師。
〇石井 鼎(いしい かなえ)
1863年~1916年。政治家。衆議院議員。岐阜県会議長。岐阜県山県郡厳美村長。
〇国友 鼎(くにとも かなえ)
1877年~1957年。医学者。
〇山宮 鼎(さんぐう かなえ)
1877年~?。内務官僚。
〇原 正鼎(はら せいてい)
1881年~?。裁判官。
〇山本 鼎(やまもと かなえ)
1882年~1946年。版画家、洋画家。
〇堀田 鼎(ほった かなえ)
1883年~1942年。内務官僚。県知事、台湾総督府交通局総長。
〇原 石鼎(はら せきてい)
1886年~1951年。俳人。本名は鼎。
〇前田 鼎(まえだ かなえ)
1886年~1961年。医学者、京都帝国大学医学部長・名誉教授。
〇佐久間 鼎(さくま かなえ)
1888年~1970年。心理学者、言語学者、国語学者。
〇水野 鼎蔵(みずの ていぞう)
1890年~1968年。政治家、実業家、教育者。
〇丹羽 鼎三(にわ ていぞう)
1891年~1967年。造園学者。
〇落合 鼎五(おちあい ていご)
1893年~1953年。陸軍の軍人。
〇波多野 鼎(はたの かなえ)
1896年~1976年。経済学者、政治家。
〇板倉 鼎(いたくら かなえ)
1901年1929年。洋画家。
〇小川 鼎三(おがわ ていぞう)
1901年~1984年。解剖学者、医史学者。
〇飯田 鼎(いいだ かなえ)
1924年~2011年。経済学者。
〇太壽堂 鼎(たいじゅどう かなえ)
1926年~1996年。法学者。
など。
日本では、男性名で、鼎と書いて、かなえと読むというケースが多いようです。
古代中国
〇曹 鼎(そう てい)
中国後漢末の人物。
〇閻 鼎(えん てい)
?~312年。中国西晋時代の人物。
など。
清
〇潘 鼎新(はん ていしん/Pan Dingxin)
1633年~1721年。中国清代の天文家・数学者・暦学者。
〇梅 文鼎(ばい ぶんてい/Mei Wending)
1828年~1888年。清末の官僚。
〇李 鼎新(り ていしん)
1861年~1930年。清末民初の海軍軍人。
など。
中華民国/台湾
〇呉 鼎昌(ご ていしょう/Wu Dingchang)
1884年~1950年。清末、中華民国の政治家・銀行家・実業家・ジャーナリスト。
〇沈 覲鼎(しん きんてい/Shen Jinding)
1894年~2000年。中華民国(台湾)の外交官・学者。
〇蔣 鼎文(しょう ていぶん/Jiang Dingwen)
1896年~1974年。中華民国(台湾)の軍人。
〇朱 鼎卿(しゅ ていきょう/Zhu Dingqing)
1902年~1982年。中華民国(台湾)の軍人。
〇谷 正鼎(こく せいてい/Gu Zhengding)
1903年~1974年。中華民国(台湾)の政治家。
など。
近代中国
〇韓 鼎祥(かん ていしょう/Han Dingxiang)
1937年~2007年。中国のローマカトリック教会の司祭。
〇楊 鼎新(よう ていしん/Yang Dingxin)
1998年生まれ。囲碁棋士。
など。
朝鮮
〇趙 鼎(ちょう てい)
高麗の重臣。
〇方 禹鼎(ほう うてい/パン・ウジョン/방 우정)
1772年~1820年。李氏朝鮮後期の武臣。
〇趙 鼎権(チョ・ジョングォン/Cho Jeong Kwon/조정권)
1949年~2017年。韓国の詩人。
中国語系統ではding、韓国語系統ではJeongのように発音するようです。
意味が立派なのでさまざまな国で用いられています。
鼎が付く駅
長野県飯田市には、鼎駅(かなええき)という駅があります。
無人駅になる前までは、鼎と叶えをかけて、入場券が人気があったとか。
この字を名前に使うことについて
鼎という字は、帝位の印として用いられたことから、それほどの器を持つ、大器の人を連想させます。決して悪い印象はありません。
しかし、この字を日常生活で使うことがまずありません。
また、日本においては、人名に使うことのできなかった時代が長く続いたので、この字を見たことさえないという人もいるかもしれません。
初めてこの字を見て、虫みたいという感想を抱く人もいます。
一方で、現代社会では、他人の名前を空で手書きするという機会がすっかり減りました。スマートフォンやパソコンといった機器が人々の傍らにあることがほとんどです。漢字一文字でカナエと読む字と言われたら変換候補にこれしか挙がらないので、説明するのはある意味楽かもしれません。
ただし、この字の使い方は難しいかもしれません。人名においては、カナエと読むことが一般的ですが、現代ではカナエは男性より女性に多い印象があります。しかし、女性で鼎はなかなか厳ついかもしれません。あるいは、ジェンダーフリーを叫ばれる現代だから問題ないでしょうか。音読みのテイが付く名前というのもなかなか珍しいですよね。