【名付け】紫苑 / しおん とはどんな植物?

紫苑 という名前の人がいますが、そもそも紫苑とはどのような植物なのでしょうか。

また、紫苑とはどのような植物なのでしょうか。

しおん【紫苑・紫菀】

キク科の多年草。シベリア・モンゴルなどアジア北東部の草原と西日本に広く分布。観賞用に栽培。茎は直立し、高さ1.5メートル前後。秋、茎の上部で分岐、淡紫色の優美な花を多数つける。鬼の醜草(しこくさ)。のし。しおに。[季語:秋]

(広辞苑第五版より抜粋)

しおに【紫苑】
(シヲンのンをニと表記したもの)
1.[植物]⇒「しおん」に同じ。
2.襲(かさね)の色目の名。表は薄色、裏は青。

(広辞苑第五版より抜粋)

しをん【紫苑】

1.植物の名。茎の高さが一、二(メートル)あり、秋、淡紫色の花をつける。鬼の醜草(しこぐさ)。[季語:秋]
2.「紫苑色」の略。

(全訳古語辞典第三版より抜粋)

紫苑とは秋の花。また、紫苑色のこと。襲の色目の名前でもあって秋に用いられました。


現代仮名遣いでは「しおん」、旧仮名遣いでは「しをん」。かつては「しおに(しをに)」とも呼びました。

古今和歌集に“ふりはへて いざふるさとの 花見むと 来しを匂ひぞ うつろひにける”という和歌があります。“こしをにほひぞ”と“しをに”が含まれています。このように紫苑は“しをに”として和歌に詠まれることがありました。

別名の鬼の醜草とは何でしょうか?と調べてみると、今昔物語に由来する説があるようです。

「鬼の醜草(しこくさ)」は紫苑の異称で、今昔物語の「親を亡くした2人の息子の兄は悲しみを忘れる「忘れ草(萱草)」を、弟は「思い草(紫苑)」を墓に植えて毎日墓参した。兄は次第に墓参りをしなくなるが、弟は墓参りを欠かさなかった。墓を守る鬼は弟の孝心に感じいった」という話に由来するようです。

参考:http://www.eisai.co.jp/museum/herb/familiar/oni.html

日本で、紫苑は“忘れない”ことを意味する植物です。

学名は、Aster tataricus。
asterは古代ギリシア語で星の意味。asterは花序の形に由来し、tataricusはタタール地方に由来します。

中国語では紫菀。日本にほぼそのままの表記で渡ってきてシオンと音読みしています。

ところで、紫苑の漢字にはどのような意味があるのでしょうか。


総画:12画
音読み:シ 訓読み:むらさき

《意味》
むらさき。青と赤のまじった色。△孔子はこれを中間色だとしてにくんだが、いっぽうまた、高貴の色として珍重された。

《解字》
会意兼形声。此は「止(=̪趾。あし)+比(ならぶ)の略体」の会意文字で、両足がそろわず、ちぐはぐに並ぶこと。紫は「糸+(音符)此」で、赤と青をまぜて染めた色がそろわず、ちぐはぐの中間色となること。

(漢字源より抜粋)


総画:8画
音読み:エン、オン 訓読み:その

《意味》
一.1.まるい囲いを設けて、花や木を植えたり、獣を飼育したりする所。まきば。
2.ものをよせ集めた所。集団。
3.その。宮廷に所属する庭園。また、花ぞの。
二.樹木が盛んに茂るさま。
三.心にわだかまる。むかむかするさま。

《解字》
会意兼形声。下部の字(音エン)まるくかがむ、まげておしこめるの意。苑はそれを音符とし、艸をそえたもの。まるい囲いの中に花や木や動物をおしこめて養う所。園ときわめて近い。鬱はその後尾が転じた言葉。

(漢字源より抜粋)

紫は色の名前。苑は花ぞの。
紫の花はアジサイやスミレなどいろいろありますが、紫の花といえば紫苑だと名付けたのでしょうか。

ところで、紫苑という名前は、ものすごくありふれているというわけでもないように思います。

今昔物語に伝わるお話が物悲しいものだからでしょうか。

それとも、シオニズムなどから宗教的なイメージを持つ人がいるからでしょうか。

あるいは、男の子に花の名前を付けるには派手すぎ、女の子に付けるにはやや地味だからなのでしょうか。春を代表する花である梅や桜、桃等に比べればあまり華やかさはないかもしれません。

何にしても、平安の昔から、秋を代表する花として日本人に愛されてきた花であることに間違いないようです。

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