名付けに茜の字は良いのでしょうか?それとも良くないのでしょうか?
茜さす~などと和歌によく使われることから風流だと名付けに用いられることもあります。
しかし、そもそも茜とはどのような意味のある字なのでしょう。
漢和辞典にはこのように載っています。
茜
総画:9画
音読み:セン 訓読み:あかね《意味》
{名詞}あかね。つる草の名。山野に自生する。根は赤い染料となり、また、止血薬として使われる。あかねぐさ。▷訓の「あかね」は、赤根の意。
{名詞}あかね。あかねの根で染めた、やや黒ずんだ赤色。あかねいろ。《解字》
会意兼形声。「艸+音符(西)(日のおちる方向、夕焼け色)」。(漢字源より抜粋)
茜という字は、義務教育期間中に習う常用漢字ではありません。このため、知らない人がいても仕方がないかもしれません。ただ、クサカンムリにニシといえば通じるのではないでしょうか。
第二次世界大戦後の1948年頃に、名前に使うことのできる漢字に制限を設けることが決まりました。
ただし、苗字や既に付けられた名前については規制の対象外です。このときに茜という字は日本人の本名(下の名前)に用いることができなくなりました。しかし、1976年に“人名用漢字”として茜の文字が追加され、名前に使うことが可能になりました。
つまり、日本人で本名に茜の文字を名前に持つのは、苗字がそうであるか、1948年より前に生まれたか、1976年以降に生まれたか、改名したなどの特殊な事情を持つ人です。
ちなみに、おなじく植物のアカネの意味を持つ蒐ですが、2004年に人名用漢字に追加されました。
茜は、植物の茜や茜色を指す言葉。
あかね【茜】
1.アカネ科の蔓性多年草。山野に自生し、根は橙色。茎は四角く、中空でとげがある。各節に四つ葉を輪生し、秋、白色の小花をつける。根から染料を採った。《季語:秋》
2.セイヨウアカネの根からとった赤い染料。アリザリンを含む。茜根。
3.茜色の略。(広辞苑第五版より抜粋)
茜草 淡い黄緑 小花咲く 篤人 pic.twitter.com/P2w79QpXvz
— 渡部篤 (@watanabeatushi) August 20, 2019
では、茜色とはどのような色なのでしょうか。国語辞典にはこのように載っています。
あかねいろ【茜色】
茜の根で染めた色。赤色のやや沈んだ色。暗赤色。あかね。
(広辞苑第五版より抜粋)
茜色とは、暗赤色を指すようです。
今人気の桜や杏は春に華やかに花を咲かせるので、このように美しく育ってほしいという願いがとてもわかりやすいですが、それに比べると、茜も茜色も落ち着いた印象です。茜色も茜草もその良さがわかるのはずっと大人になってからかもしれませんね。渋い印象の名前と言えましょうか。
茜が入る言葉
あかねぐも【茜雲】
朝日や夕日を受けて茜色に映える雲。
(広辞苑第五版より抜粋)
あかねさす【茜さす】《枕詞》
あかね色に美しく輝く意から「日」「紫」「日」「照る」「月」「君」などにかかる。
(広辞苑第五版より抜粋)
はつあかね【初茜】
元旦の朝の、茜色に染まった空《季語:新年》
(広辞苑第五版より抜粋)
あかねほる【茜掘る】
薬・染料とするため、秋の山野でアカネの根を掘り取る。《季語:秋》
(広辞苑第五版より抜粋)
など。
茜という字は人気がある?
茜という字は人気があるのでしょうか。
明治安田生命の名前ランキングでは、その年に生まれた子供に付けられた名前のうち、1912年からは10位以内に入る人気の名前を、2004年からは100位に入る人気の名前を発表しています。
茜はどうでしょうか。
茜 | |
年 | 順位 |
1992年 | 4位 |
1993年 | 8位 |
1995年 | 10位 |
2008年 | 98位 |
2014年 | 29位 |
2016年 | 70位 |
2019年 | 98位 |
どうやら1990年代に人気があったようです。
その理由についてはわかりません。
検索してみると、オスカープロモーションが開催している全日本国民的美少女コンテストで、1990年に小田茜(おだ・あかね)という名前の女性が小学校6年生でグランプリを獲得し、まさしく美少女と話題になったそうです。そのことは関係があるのでしょうか。
また、明治安田生命の名前ランキングでは、表記を考慮せず、読み方のみを考慮したランキングを2004年から50位まで発表しています。
茜は人名ではアカネと読むことが多いですが、アカネは一度だけランキング入りしたことがあり、2014年に50位でした。
参考:https://www.meijiyasuda.co.jp/sp/enjoy/ranking/index.html
茜という字が入る名前の有名人
茜は名前にどのように用いられているのでしょうか。
日本
◇黒木 茜(くろき あかね)
1978年8月13日生まれ。馬場馬術選手。
◇千早 茜(ちはや あかね)
1979年8月2日生まれ。小説家。
◇鳥飼 茜(とりかい あかね)
1981年8月13日生まれ。漫画家。
◇高田 茜(たかだ あかね)
1990年4月18日生まれ。バレエダンサー。
◇中嶋 茜(なかしま あかね)
1990年8月17日生まれ。ゴールボール選手。
◇細山田 茜(ほそやまだ あかね)
1992年3月9日生まれ。アイスホッケー選手。
◇堀田 茜(ほった あかね)
1992年10月26日生まれ。ファッションモデル。
◇藤田 茜(ふじた あかね)
1993年1月26日生まれ。声優。
◇片渕 茜(かたふち あかね)
1993年7月26日生まれ。テレビ東京のアナウンサー。
◇坂ノ上 茜(さかのうえ あかね)
1995年12月5日生まれ。女優。
◇山口 茜(やまぐち あかね)
1997年6月6日生まれ。バドミントン選手。
◇荒木 茜羽(あらき あかね)
1996年10月21日生まれ。バドミントン選手。
◇守屋 茜(もりや あかね)
1997年11月12日生まれ。女性アイドルグループ・櫻坂46のメンバー。
◇熊田 茜音(くまだ あかね)
2000年2月3日生まれ。声優、歌手。
◇涌嶋 茜(わくしま あかね)
2000年6月14日生まれ。シンガーソングライター。
など。
女性の名前に使われることがほとんどで、アカネと読むことが多いようです。
茜は秋の季語として用いられることがありますが、茜という字を名前に持つ人の生まれた月はさまざま。初茜や茜さす~の和歌に由来する場合もあり、秋限定で使われているわけではないのでしょう。
海外
◇成 露茜(Chéng Lùxī)/Lucie Cheng
1939年2月11日~2010年。イギリス領であった香港に生まれた。社会学者。
◇陳文茜(Chén Wénqìan)/Sisy Chen
1958年3月25日生まれ。台湾の政治家、ニュースキャスター。
◇楊 茜堯(Joeng Sin jiu)/Tavia Yeung
*芸名?
1979年8月30日生まれ。イギリス領であった香港に生まれた。女優。
◇万 茜(Wan Qian)/Regina Wan1982年5月14日生まれ。中国の女優、歌手。
◇Cathy Yan/閻 羽茜(Yan Yuxi)
1983年1月25日生まれ?中国系アメリカ人の、映画監督、脚本家、映画プロデューサー。
中華人民共和国に生まれ、4歳の頃にアメリカに移住した。
◇黄 茜(Huang Qian)
1986年7月18日生まれ。中国のチェスプレイヤー。
◇宋 茜(Song Qian)/Victoria Song
1987年2月2日生まれ。中国の歌手、ダンサー、女優、モデル。
◇趙 茜沙(Zhao Xisha)
1992年9月28日生まれ。中国の自転車競技選手。
◇任 梦茜(Ren Mengqian)
1993年10月4日生まれ。中国の棒高跳選手。
◇María Xiao Yan/肖 瑶茜(Xiāo Yáoqiàn)
1994年5月19日生まれ。ポルトガル-スペインの卓球選手。
中国人の両親の元にスペインのバルセロナで生まれ、ポルトガル領のマデイラで育つ。
◇張 茜(Zhang Xi)
1994年8月27日生まれ。アイドルグループ・SNH48のメンバー。
◇陳 楠茜(Chen NanXi)
1997年1月13日生まれ。アイドルグループ・GNZ48のメンバー。
◇任 茜(Ren Qian)
2001年2月20日生まれ。飛込競技選手。
◇唐 茜靖(Tang Xijing)
2003年1月3日生まれ。中国の体操選手。
など。
他の漢字文化圏でも同じように植物のアカネの意味で用いられているようです。
分布は中国、朝鮮半島、台湾、日本、東南アジアに分布し[6]、日本では本州、四国、九州に分布する[7]。山地や野原、路傍、林の縁などでふつうによく見かけることができる
Wikipedia
アカネは東アジアに広く分布する植物なんですね。