蘭 という字が名前に入る人がいますが、どのような印象があるでしょうか。
そもそも意味のある字なのでしょう。
蘭
総画:19画
音読み:ラン 訓読み:あららぎ
《名付け》か《意味》
1.草の名。秋、淡紅紫色の小さい花が多く集まって、一つの花のように咲く。よい香りがある。ふじばかま。△古くは薫草も蘭といった。日本では、秋の七草の一つ。
2.らん科植物の総称。花は美しく香気があり、観賞用として栽培される。
3.書庫・文書を扱う役所。△蘭の香りが虫よけになることから。
4.木蘭の略。
[日本語特有の意味]1.「和蘭多(オランダ)(国の名)」の略。2.あららぎ。針葉樹の一種。一位の異名。《解字》
会意兼形声。「艸+(音符)闌(ラン)(並んでさえぎる)」。群がりたって欄(手すり)のように並ぶ草。(漢字源より抜粋)
この字の意味は、草の名前。
らん【蘭】
1.ラン科植物の総称。本来は、1本の花茎に1花をつけると東洋蘭(1茎1花)のこと。日本にはカンラン・シュンラン・クマガイソウなどが自生。また、観賞用として洋蘭・東洋蘭の栽培も盛ん。スズラン・ハラン・クンシランなどランの和名をもつがラン科でないものも多い。
2.フジバカマの異称。
3.アララギの異称。
4.和蘭(オランダ)の略。
5.紋所の名。(広辞苑第五版より抜粋)
あららぎ【蘭】
ノビルまたは行者葫(ぎょうじゃにんにく)の古名。
イチイの別称。(広辞苑第五版より抜粋)
らに【蘭】
ふじばかまの異称。[季語:秋]
(全訳古語辞典第三版より抜粋)
蘭は、ふじばかまの異称です。
ふじばかまはキク科の多年草。秋の七草の一つで、秋の襲(かさね)の色目の名前でもあります。このことから、ふじばかまや蘭(らに)は秋の季語とされることがあります。
蘭の香や てふの翅(つばさ)に たき物(もの)す
〈野ざらし紀行・芭蕉〉
(なまめかしい)秋蘭の花の芳香よ。(羽をやすめている)あでやかな蝶の羽にまで(美しい着物に)香(こう)を薫(た)きこめるように)その芳香をしみこませていることだ。
(全訳古語辞典第三版より抜粋)
俳句などで詠む場合に、蘭といえば、ふじばかまを指して秋の季語とされることが多いようです。一方で、春蘭(しゅんらん)や君子蘭(くんしらん)、銀蘭(ぎんらん)は春の季語、紫蘭(しらん)、風蘭(ふうらん)は夏の季語、寒蘭(かんらん)は冬の季語とされることがあります。
↓春蘭
情報館前のランコーナーにて #シュンラン が開花しました。日本に自生するランでは最も早く開花し、春の訪れを知らせてくれます。白い唇弁に紫褐色の点があることから、「ホクロ」という別名もあります。#植物多様性センター #エア植物園 pic.twitter.com/SzeOOfDlS4
— 植物多様性センター(神代植物公園) (@ParksTayousei) March 8, 2021
↓紫蘭
20120430シラン(紫蘭、Bletilla striata Reichb. fil.) なんと準絶滅危惧種NTだそうです pic.twitter.com/CIZqXWLQ
— shuu_ski (@shuu_ski) April 30, 2012
↓フジバカマ
藤袴、Eupatorium japonicum
準絶滅危惧種(NT)に指定されています。 pic.twitter.com/7c1gFw6CQZ— 王虎 (@ACade_KT) October 5, 2016
↓寒蘭
Cymbidium kanran ‘Da Syong Mao’ in bloom. Meant to be a cool or cold grower, seems to like my warm conditions. Absolutely exquisite. Plants for sale on my eBay if you’re in the UK. pic.twitter.com/7OTD1WyPxH
— Kev’s Orchids 🏳️🌈 (@kevsOrchids) September 16, 2019
中国では、その高潔な美しさを君子にたとえて、梅・菊・蘭・竹の総称して四君子(しくんし)と呼びました。
日本でも、絵画などでそのように扱われています。
また、芝蘭(しらん)の化(か)とは、すぐれたものに感化されることをいいます。
芝は瑞草、蘭は香草を指します。
こうしたことから、蘭は東洋では良い印象のある字なのではないでしょうか。
東洋で、蘭という名前の人といえば、
日本
〇井上 蘭台(いのうえ らんだい)
1705年~1761年。
江戸時代中期の儒学者、戯作者。
〇岩見 蘭始(いわみ らんし)
1893年~1970年。
政治家、実業家。
〇加部 未蘭(かべ みらん)
1992年生まれ。
フットサル選手・元プロサッカー選手。
◇伊藤 蘭(いとう らん)
1955年生まれ。
女優、ナレーター、歌手。元キャンディーズのメンバー。
◇河合 蘭(かわい らん)
1959年生まれ。
ジャーナリスト、評論家、写真家。
◇森本 蘭(もりもと らん)
1967年生まれ。
モデル、タレント、実業家。
◇鈴木 蘭々(すずき らんらん)
*本名は鈴木智子。
1975年生まれ。
女優、歌手、実業家。
◇羽田 未蘭野(はねだ みらの)
1978年生まれ。
フリーアナウンサー。
◇松本 蘭(まつもと らん)
1983年生まれ。
ヴァイオリニスト。
◇堀井 有蘭(ほりい うらん)
1995年生まれ。
バレーボール選手。
◇卜部 蘭(うらべ らん)
1995年生まれ。
陸上競技選手。
◇蘭(らん)
1995年生まれ。
ファッションモデル。タレント。
◇白岩 蘭奈(しらいわ らんな)
1996年生まれ。
バレーボール選手。
◇松田 蘭(まつだ らん)
1997年生まれ。
女性モデル、レースクイーン。
◇中野 蘭菜(なかの らな)
1997年生まれ。
トランポリン選手。
◇風戸 蘭七(かざと らな)
1998年生まれ。
シンガーソングライター。
◇寺田 蘭世(てらだ らんぜ)
1998年生まれ。
女性アイドルグループ・乃木坂46のメンバー。
◇三宅 紗蘭(みやけ さら)
1999年生まれ。
陸上競技選手。
◇野原 未蘭(のはら みらん)
2003年生まれ。
棋士。
◇小林 星蘭(こばやし せいらん)
2004年生まれ。
女優、タレント。
中国
〇周 蘭(しゅう らん)
楚の武将。
〇薛 蘭(せつ らん)
?~195年。
中国後漢末期の武将。
〇呉 蘭(ご らん)
?~218年。
中国後漢末期の武将。
〇陳 蘭(ちん らん)
?~209年。
中国後漢末期の武将。
〇夏侯 蘭(かこう らん)
中国後漢末期の武将。
〇段 蘭(だん らん)
鮮卑段部の大人。
〇李 善蘭(り ぜんらん/Li Shanlan)
1810年~1882年。
字は壬叔、号は秋紉。清末の数学者。
〇陳 蘭彬(ちん らんひん/Chen Lanbin)
1816年~1895年。
字は茘秋。清末の官僚・外交官。
〇馮 友蘭(ほう ゆうらん/Feng Youlan)
1895年~1990年。
哲学研究者。
◇滕 芳蘭(とう ほうらん)
三国時代の呉の孫晧の皇后。
◇申 紀蘭(しん きらん/Shen Jilan)
1929年~2020年。
政治家。
◇李 蘭娟(り らんえん/リー・ランジュエン/Li Lanjuan)
1947年生まれ。疫学者。医師。
◇湯 素蘭(とう そらん/Tang Sulan)
1965年生まれ。
児童文学作家。
◇盧 蘭(ろ らん/ルー・ラン/Lu Lan)
1987年生まれ。
バドミントン選手。
中華民国
〇洪 蘭友(こう らんゆう/Hung Lan-you)
1900年~1958年。
政治家。
台湾
◇葉 菊蘭(よう きくらん/Yeh Chu-lan)
1949年生まれ。
政治家。
朝鮮
〇李 之蘭(り しらん/イ・ジラン)
1331年~1402年。
高麗末期から李氏朝鮮初期の武将。
〇河 成蘭(ハ ソンラン/Ha Seong Ran)
1331年~1402年。
高麗末期から李氏朝鮮初期の武将。
◇鄭 蘭貞(てい・らんてい/チョン・ナンジョン/Jeong Nan-jeong/정난정)
?~1565年。
李氏朝鮮第11代国王・中宗の第3王妃文定王后尹氏の姻族であった女性。
◇趙 京蘭(チョ・ギョンラン/Jo Kyung Ran/조경란)
1969年生まれ。
小説家。
◇金 璟蘭(キム・ギョンラン/Kim Kyung-ran/김경란)
1977年生まれ。
元韓国KBSアナウンサー。
など。
ラテン文字では、中国語圏だとLan、韓国語圏だとRanのようになることが多いようです。発音も違うのかもしれません。一方で、日本では蘭はらんと読むので、発音は遠くかけ離れているほどではないのでしょう。
SNS上では、蘭といえば『名探偵コナン』という漫画作品に登場する女子高生・毛利蘭(もうり・らん)という意見も。
でも、欧米では、あまり見られない名前です。
ラン科の種はラン(蘭)と総称される。英語では「Orchid(オーキッド)」で、ギリシア語の睾丸を意味する「ορχις (orchis)」が語源であるが、これはランの塊茎(バルブ)が睾丸に似ていることに由来する。
(Wikipediaより)
これが原因でしょうか?
しかし、蘭は世界に700属以上15000種あるというくらいなので、古今東西で愛されてきた花であることに間違いないと思います。
東洋の蘭は楚々とした印象ですが、西洋の蘭は胡蝶蘭など豪華絢爛な印象です。