2015年に、巫という字が人名用漢字に追加されました。
日本では、1948年頃に法改正がなされ、名前に使うことのできる漢字に制限がかかるようになり、名前に使うことのできる漢字は、常用平易な漢字のみと定められました。常用平易な漢字とは、常用漢字と人名用漢字を指します。もちろん、それ以前から存在する苗字や、既に付けられた名前については規制の対象外です。
つまり、改名したなど特殊な事情を持つ人もいますが、日本人で、巫という字を本名に持つのは、苗字がそうであるか、1948年より前に生まれた人か、2015年以降に生まれた人がほとんどということです。
この字を本名に持つ日本人はそう多くないのではないでしょうか。
ところで、巫とはどのような意味があるのでしょうか。
巫
総画:7画
音読み:フ、ブ、ム 訓読み:みこ、かんなぎ《意味》
みこ。かんなぎ。舞や音楽で神を招いて、神仕えをする人。△信仰と生活の結びついた古代には、巫は王と同等の神職であった。のち、人権の伸長につれ、術によって神がかりとなる祈祷師になった。特に女みこを巫といい、男みこを覡といった。(漢字源より抜粋)
この字の意味は、「みこ」。神に仕える人。
「みこ」は現代では、巫女と書き、未婚の女性がなるものというイメージがあります。
しかし、男性にもいて、特に「覡(かんなぎ)」などと呼ぶこともあります。
巫覡(ふげき)とは、神と人を媒介する人という意味。女性が巫で、男性が覡です。
古来は、巫女と一言に言ってもいろいろな人がいたようです。
・口寄せ(霊魂を呼びその意志を伝えること)を行う、英語でいうシャーマンのような存在。
・歩き巫女といって放浪しながら祈祷を行う人。特定の神社に所属したり、遊女の側面を持つ場合もあった。
・特定の神社に仕える少女や皇族の女性。生涯独身のまま神に仕えることもあった。
など。
現代の一般的な巫女のイメージは一番最後のもの。
歩き巫女の存在は明治維新とともにほとんど消えて行ってしまい、巫女といえば、特定の神社に仕える若い女性というイメージになりました。
しかし、これといった決まりがあるわけではないので、現代でも生涯奉職する巫女がいます。
継承するという意味でも舞を踊れる巫女というのは貴重な存在です。特に小さな神社では、宮司の妻や結婚した娘が巫女を務めることがあります。
巫女には定年があるわけではないので(神社によっては年齢制限がある場合がありますが、すべての神社でそのように決まっているような取り決めではありません)、様々な年齢の人がいますし、必ずしも未婚で子供がいないというわけではありません。既婚で子供がいる巫女も存在しています。
あるいは、シャーマンの意味であっても、やはり定年というものが必ずしも決まっているものではありません。
ところで、巫は神に仕える人という意味のある字。果たして名前にふさわしいのでしょうか。
悪い意味かといえば、そうではありませんが、どうしても職業を限定されてしまう印象があります。
いまなお生まれた瞬間から親の職を継ぐことを期待される人がいますが、医者の子に医を入れるとか、歌舞伎役者の子に役を入れるとか、継がせたい職業を名前に直に入れるというのはなかなか珍しいのではないでしょうか。
巫の字が名前に入っていると、神社の家の子かと好奇の目で見る人がいるかもしれません。