しおりという名前の表記ですが、現代仮名遣いで“しおり”と書く人もいれば、旧仮名遣いで“しをり”と書く人もいるし、“しほり”と書く人もいます。
“しをり”と“しほり”どちらが正しいのでしょう?
古語辞典によるとこうです。
しをり【枝折り・栞】
(名詞)
山道などで、木の枝を折って道しるべとしたもの。
(全訳古語辞典第三版より抜粋)
しをり【撓り】
(名詞)《文芸用語》
「さび」「ほそみ」とともに蕉風俳諧の重要な理念の一つ。作者の繊細で情趣をもった心が、旬の余情としてかもしだされることをいう。単に「あはれ」な句ではなく、「あはれ」と思う心の働きが句に表れるのをいう。
(全訳古語辞典第三版より抜粋)
しほり【撓り】
(名詞)
「しをり(撓り)」に同じ。
(全訳古語辞典第三版より)
日本語には表記揺れが付きものなので、厳密なものではないかもしれませんが、旧仮名遣いでは、
・しおりが、枝折り・栞と書いて、道しるべを指すときは、“しをり”。もともと“枝(し)+折る(をる)から来た言葉なのだから、“しほり”と書くのはおかしい。*折る(おる)は旧仮名遣いで“をる”。
・しおりが、撓りと書いて、俳諧の文芸用語を表すときは、基本的には“しをり”だが、“しほり”でも良い。
といった具合でしょうか。
ちなみに、栞の字は、1990年に人名用漢字に加わって、本名に使えるようになりました。
戦後1940年代後半に、法改正がなされ、名前に使える漢字に制限がかかりました。それより前は、名前の表記に特段の制限がありませんでした。改名したなどさまざまな事情を持つ人がいるでしょうが、本名に栞の字を持つ日本人は、1950年以前に生まれた人(概ね戦前生まれ)と1990年以降に生まれた人がほとんどです。
栞
総画:10画
音読み:カン
訓読み:しおり、しおる、きる《名付け》
しおり《意味》
1.{名詞}しおり(しをり)。山林を歩くときに道の目じるしとするために折った木の枝。木のふだ。
2.{動詞}しおる(しをる)。きる。木の枝を折って、道の目じるしにする。四角く切りとる。
【日本語特有の意味】しおり(しをり)。ア.読みかけた本にはさんで、目じるしとするもの。イ.転じて、手引き。《解字》
会意兼形声。上部の字(音カン)は、上端がそろったさまを描いた象形文字。栞はそれを音符とし木を加えた字で、同じ大きさに四角く切りとった木のふだ。(漢字源より抜粋)
ネット上では、栞の見た目は物干し竿っぽいという意見も。
一方で、撓という字は、常用漢字表にはなく、人名用漢字でもないので、現在は名前に使うことができません。
前述のとおり、昔は名前に使える漢字に制限がなかったので、法改正以前に生まれた日本人には、撓の字を本名に持つ人がいるかもしれません。
撓は、常用漢字でもなく、人名用漢字でもないので、日常生活ではまず目にすることがありませんが、どのような意味があるのでしょうか。
撓
総画:15画
音読み:ドウ、ニョウ、トウ
訓読み:たわめる、たわむ、ためる、みだす、みだれる《意味》
1.{動詞}たわめる(たわむ)。たわむ。しんなりと曲げる。柔らかに曲がる。
2.{動詞}ためる(たむ)。しんなりと曲げて形を整える。
3.{動詞}みだす。みだれる。みだす。また、こねまわす。△擾(ジョウ)にあてた用法。「撓乱(ドウラン)」《解字》
形声。「手+(音符)堯(ギョウ)」で、柔らかく曲げること。(漢字源より抜粋)
柔らかという意味から、撓でしをり(しほり)と、心の働きを意味する文芸用語に使われるようになったのでしょうか?
2019年に明治安田生命が発表した名前ランキングによると、女の子の読み方のランキングでシオリの響きが31位。
2012年以来ずっと50位以内に入っています。最も順位が高かった年でも2016年と2018年の28位なので、流行り廃りのない無難な名前といえるでしょう。
栞が名前に入る有名人といえば、モデルの佐藤栞里(さとう・しおり)さんや、バレーボール選手の荒谷栞(あらたに・しおり)さんなど。
また、しほりといえば、女優の貫地谷しほり(かんじや・しほり)さんなど。
参考:https://www.meijiyasuda.co.jp/enjoy/ranking/index.html